引きこもりのWikiドイツ語版を

訳して見た

(日本語版ひきこもり)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%95%E3%81%8D%E3%81%93%E3%82%82%E3%82%8A

(ドイツ語版ひきこもり)
http://de.wikipedia.org/wiki/Hikikomori

ドイツ語版の記述が客観的でおもしろいと思った。微妙に日本版の記事と視点が違う。さすがに文章量も具体的な情報も日本語版より少ないし、明らかに情報が正しくない箇所はいくつかあるけど。

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日本では、自分の意思によって自宅および自室に引きこもり社会とのコンタクトを最低限に減らしている人たちが引きこもりと(部屋に篭もる及び社会的隠遁)呼ばれている。この概念は、社会的現象と、本人自身のそれぞれ異なる個性と関係しているとされている。

日本における急速な社会的隠遁は、若い男女とも同等に当てはまるように見えるにもかかわらず、主に男性の引きこもりにおいてその行動が社会の注意や不安を喚起している。二人以上の子供がいる家庭に置いては、長男が引きこもりになりやすい。

目次
1  定義とオーダー
2  原因
2.1 影響要因
2.2 学校での抑圧
3  症状
4  暴力への発展の潜在性
5  親の態度
6  治療
7  国際比較
8  関連項目
9  Webリンク
10 書籍


定義とオーダー
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日本の厚生労働省はひきこもりを、両親の家を去ることを拒否し、最低6ヶ月以上家族や社会から退いている人と定義している。自ら数年あるいは数十年孤立することを選んでいるケースもある。

この言葉を作った精神科医斎藤環は、日本(人口約1.27億人)には100万人以上の引きこもりがいると主張している。厚生労働省は注意深い推定として5万人の引きこもりがいて、そのうちの3分の1は30歳以上と公表している。

原因
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一般的な引きこもりは登校拒否として始まる。若い日本の成人は、彼らに対する社会の大きな期待を感じ、しばしば余裕がなくなる。失敗への恐怖と本音と建前の欠如(粗訳では”公的な顔”と”本当の私”を使い分ける能力と社会人としての生活との折り合いをつけるための日常的な矛盾)は彼らを孤立へと追いやる。子供および青年から大人への移行に失敗しているという引きこもりにおける共通性を、多くの精神科医によって、現代の資本主義日本の転換およびイニシエーション儀式の失敗と説明されている


影響ファクター
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引きこもりの拡大は本質的に3つのファクターに影響を受けている。


1. 経済的状況:日本の裕福な中流階級は、大人の子供を相応に食べさせる経済的機会がある。経済的に悪い状況に置かれた家族においては子供は逆に早い時期から仕事を始める。

2. 家庭的状況:親はしばしば自身の子供の孤立の初期段階を見逃し、適切な対応を取れない。さらに甘やかされた子供、あるいはとりわけ母子家庭においてよく見られる共依存(日本では「甘え」と呼ばれている)は青年の自立を妨げる。

3. 労働市場の状況:長期に渡る経済的後退は日本の労働市場を根本的に変えた。かつての労働・サラリーマン世代は終身雇用に頼ることができたが、今日の新入社員の職探しにしばしば絶望的となっている。日本の労働市場の解体と再調整は、伝統的な人生の目標の変更を強制している。


学校での抑圧
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現代の日本の学校システムは生徒に、多大な課題をこなすことと、記憶学習を重視することを要求している。既に1960年には、学校システムの各段階において(幼稚園ですら)入学試験が導入され始めた。大学受験のために一部の受験者は1年まるごとその準備に費やす。1996年より文部科学省により、生徒により創造的で自由な場所与え、登校日を週6日から5日にし、日課から2教科を減らす対策が導入された。新しい指導要領はより西洋の学校システムに近くなっている。

変化はしかしかなり遅れた:熱心な親は、自身の子供を、”自由過ぎる”システムの公立学校を避けるため、(新しい指導要領以降)その後数が増えた私立学校へと送った。クラスメイトからも個別の生徒はいじめられる。この「いじめ」(日本におけるいじめの特殊な形態)の理由は、学校やスポーツにおける成績、民族性、社会的出自あるいは長期の海外居住と見られる。


症状
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ひきこもりの症状は密かに始まり、完全な隠遁という最終的な特徴へと進行する。
その際、生涯の友達の喪失や、友人の喪失、増大する恐怖、内気、そしてコミュニケーション能力の現象という深刻な過程を辿る。

ひきこもりは大抵の場合、特定の部屋にひきこもり、外的環境から自分を守る。一日を寝て過ごし、夜間に活動的になる。一部の人たちは夜間自分の部屋を脱することに成功している。他の人たちは、夜中じゅうPCや窓のそばに座るっている。


暴力への発展の潜在性
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増大する親そして社会からの圧力と、状況から自ら脱する能力の欠如は、ひきこもりの人により強いフラストレーションおよびコントロール不能な怒りをもたらしかねない。これは大抵、例えば夜中に騒音をまき散らすなどの精神的テロと言う形で現れる。稀なケースである人身への暴力は、大抵の場合、自らの家族内に限定される。

2000年5月3日に佐賀県でバスジャックをし、乗客一人を刃物で刺殺し、さらに4人に怪我を負わせた17歳の男は、最初に引きこもりと名づけられたケースで、日本国内で、この現象の膨大なメディアによる繰り返し報道を引き起こした。しかし引きこもりとして典型的でなかったのは、彼は以前、治療のために2ヶ月閉鎖精神病棟にいたことである。精神分析分野においては、彼は親が入院を認めたことを裏切りと簡易、この暴力的な行動によって自ら母親に復讐に立ち上がったと推測された。

それ以降、メディアはひきこもりと暴力行為の関連性を特に強調して伝えた。そのため、一般にはひきこもりは暴力的だという悪評が立ち、社会的圧力はさらに強まった。しかし専門家たちはこの現象を、典型的なひきこもりは、どのような暴力、とりわけ身体的暴力を家族の家の外に持ち出すには、シャイでひきこもりすぎている、と主張した。


親の態度
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家族は引きこもりの人がいる場合、強い悪評に悩まされる。そして周囲からの屈辱を受けることを度を越して恐れている。ほとんどの親は、子供が自力で社会に戻ってくるのを待っているだけだ。彼らが自ら踏み出すまでに長い期間を要するかもしれない。伝統的な母子家庭においてはケアの妨害も寄与している。


治療(ケア)
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引きこもりのケアのためのいくつかの異なる見解がある。
西洋的な手法が、時には数年に渡る親からの引き離しなど極端な方法で引きこもりの人を積極的に社会に戻そうとするのに対し、日本的な手法は待つことを含む。引きこもりの人たちに特化したセラピー施設は常に増えている。主に二つの方向がある:精神医学的方面は、主に長期に渡る入院を奨める。その際には投薬も行われる。社会的方面は、社会へ再び戻り、自立した生活を送るために、慣れた環境下ら離れ、他の引きこもりと共同生活で、古参の人がと新しく来た人の統合を助けることからなる。


国際比較
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NEET(Not currently engaged in Employment, Education or Training)は社会的引きこもりと似た形態を表している。このイギリス発祥で、今日ではこの略語は仕事に学業にも生涯教育にも就かず、親の元に止まっていたい人たちを表すのに用いられている。ドイツ語圏では症状の一部が引きこもりの特徴と重複する社会不安(恐怖)症として知られている。


おわり


情報はあまり正しくないというか、古いところがある。
症状などの記述は日本語版の方がさすがによくできているものの、ドイツの今の社会性がよく現れていると思った。原因を甘えとそれを許す経済的状況および社会的な抑圧と失敗が許されないという緊張の強さに求め、日本で対応がなされていないわけではないが、社会的取り組み(囲い込みとも言えるけど)は甘く、言い方を変えれば、よくて望ましい効果が出るまで時間が掛かり、悪く言えば多くがほったらかしと言える状態という書き方をしている。原因の記述はむしろ15年ぐらい前に書かれたんかとは思うけど、その後の学校での抑圧も含めて、ドイツ社会を基準とした視点が興味深い。
あと具体的な精神障害にまったく触れずに書いてあるところに驚いた。


書籍やメディアの項目には

HikiCulture: 引きこもりのためのフォーラム

フランチェスコ・ヨディーチェ、カル・カルマン著「ひきこもり」、22分の映画http://www.francescojodice.com/video/hikikomori_eng.mov

Deutsche Welleが2004年7月16日に提供のニュース報道「日本の隠れた若者たち」。

マルコ・カウフマンが2005年5月19日に日刊紙に寄せた記事「面子を潰せば締め出される」

アンネ・クンツェがシュピーゲル誌に寄せた記事「子供部屋の仙人」。ただしこれはドイツにおける引きこもり現象の記事。そしてDie Zeit Wissen誌2006年5月号に寄せた記事「ほっといてよ!」

ロリアン・クールマスがNeue Zürcher新聞に2007年7月29日に寄せた記事、「自立できない人たち、ひきこもり、高齢化社会における若者の病的な引きこもり」

が掲載されている。