ADHDとオルタナティブ療法

日本より相対的に進んでいる欧米諸国のADHD治療だけど、いまだ治療法は発展途上にあるし、何より医者や対応する医療機関と必要な社会保障が不足している現状にある。これはADHD治療が比較的進んでいると僕が思うアメリカ、イギリス、カナダ(オランダあたりもかな)などでも同じ。

そこで多くの自助グループや民間療法が出てきているわけで、それらもちょくちょくチェックしているわけだけど、現状で確立されている公式な治療に加え・・・

1.自助努力の方法論を示すタイプ
2.ハーブやホメオパシーに走るタイプ
3.食事療法に走るタイプ。2とセットなことが多い
4.自己啓発のノリのコーチングを強調するタイプ。1を支援する組み合わせの場合が多い
5.占星術などの神秘術に活路を見出そうとするタイプ

がよく目につく。


1については理屈はそのとおりだけど、ADHDはそれができないからADHDなんでしょという点を素通りしてしまっていることが多い。2はほとんど鰯のアタマも信心からの世界。3も同じ。いくつか食事に関しては示唆に富む研究があるとはいえ、たとえば砂糖に関してはADHD様の行動を引き起こすあるいはADHDの症状を悪化させるという結果とそういうことはまったくないという互いに矛盾する結果が現状では並存している(Wiki英語版では「多くの研究結果は、砂糖がまったくADHDに影響を及ぼさないことを示している」としている)。Wiki英語版によると、EFSA(European Food Safety Authority)のレビューでは食品添加物ADHDにもたらす影響は限定的と記している。その理由が、研究結果が安定せず、あるときは影響を示唆する結果、あるときはまったく影響を示さない結果がでることを挙げている。まぁ、それはともかく欧米のホメオパシー信仰は強いね。話には聞いていたけど、ADHDでもホメオパシーががんがん出てくる。ちなみに僕も知り合いのホメオパシーおよびハーブ療法の資格を持って開業している知人に、半ば誘われるままにホメオパシーをしばらく試してみたことがある。信じてない僕には天罰が下ったのか、目立った効果は実感できなかったw

4それ自体はそれほど変でもない。公式の治療でも、コーチングはほぼ必ず併用されるし、禅トレーニングすら公式の治療方法として取り入れられていることもある。が、コーチングメインとなると・・・んー。アメリカではADHDに高校中退者、大学中退者などが極端に多く*1、反対に自営業や、富豪、芸術家、芸能人などが相対的に多いという結果もあり、ADHDが起業家に向いているとしてコーチングを行っている人もいる。ここまでくるとノリはしかし自己啓発ですぞなもし。教育機関の半分が心停止しているアメリカらしいっちゃぁアメリカらしいが。

5は2以上に鰯のアタマな世界だけど、鰯のアタマとしての性能は2以上にバラつきがあるという諸刃の剣。素人にはおすすめできないにもかかわらず、ここにはまり込むのは大抵素人だろうなぁ・・・


統計的にはなんの手当てもされないADHD、とりわけネガティブなフィードバックに満たされている家庭および周辺環境に育ったADHDの人たちのお先が真っ暗なことが明らかになっている。治療にありつけないADHDの人たちがさらされる社会格差は、見えにくいがそりゃ相当強烈なもので、なまじ本人も回りも一応五体満足、つまりあまり障害者とみなされないだけに、周りの社会的要求を満たそうとがんばっちゃう。実際、医学的治療も現在は近くの臨床医のところにとりあえず行けばみたいな段階ではなく、地域や、医者、手法のばらつきが大きいようだ。そもそも血液検査してわかる、というような客観的な方法が現在のところないので、まず、診断の段階から医者の技量が問われる。有名なリタリンなどの投薬治療の効果は限定的で、副作用もある。現在では、投薬治療だけは効果があまり期待できないあるいはより深刻な結果をもたらすことが分かっていて、投薬、行動セラピー、コーチングその他もろもろ、プラス「周りの環境の変更」が組み合わされる。

一時期投薬が偏重された時代の反映か、その反作用としてこうしたオルタナティブを求める傾向も見られる。が、そりゃ確立されていないとはいえ、プラスの効果が出るならそれでもいいけど、こうしたオルタナティブは大抵、無配慮に効果が誇張されて、意味がないだけならともかく、実際には逆に悪化することもある。なによりも一番怖いのは結果が事前によく予測できないことなわけで、博打というほかない。


最近ADHDの話ばっかだな。まったく自分の過集中ぶりには泣かされる。

*1:もっともアメリカは全体的に高校中退者が多いのだが、その中でもとりわけADHDが、という意味